日本の皮革技術を支えて70年NPO法人日本皮革技術協会監修
Leather Knowledge Project

ライフサイクルアセスメント(LCA)と配分問題

環境評価は前提条件によって変わる

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、製品の環境影響を、原料調達から製造、使用、廃棄までの全段階で評価する方法である。国際的にはISO 14040シリーズに基づいて実施される。

革の評価では、特に「どこまでを評価対象とするか」と「どのように配分するか」が重要となる。

1.評価範囲(システム境界)

LCAでは、評価の範囲を明確に定める。代表的な区分は次の通りである。

  • Gate-to-gate:製革工程のみ
  • Cradle-to-gate:畜産から製品出荷まで
  • Cradle-to-grave:使用・廃棄まで含む

革は畜産に由来するため、畜産段階を含めるかどうかで結果が大きく変わる。
議論の前提として、境界設定を明示することが必要である。

2.配分(Allocation)の問題

牛からは肉、乳、皮など複数の産物が得られる。そのため、畜産段階の排出をどの産物にどれだけ割り当てるかを決める必要がある。

主な方法は次の三つである。

  • 経済配分(価格比)
  • 質量配分(重量比)
  • カットオフ法(副産物に過去排出を割り当てない)

配分方法が異なれば、革のCO₂換算排出量は変動する。
したがって、数値だけを比較するのではなく、前提条件を確認する必要がある。

3.評価指標

LCAでは、排出量を環境影響カテゴリに換算する。

代表的な指標は、

  • 地球温暖化(kg CO₂eq)
  • 水使用量
  • 酸性化
  • 富栄養化

などである。

革の議論では温暖化指標が注目されやすいが、水や排水管理など他の指標も同時に見る必要がある。

4.耐久性と機能単位

革は耐久性を持つ材料である。
そのため、「1㎡あたりの排出量」と「1年あたりの使用排出量」は異なる意味を持つ。

例えば、

  • 10年使用する材料
  • 3年で交換する材料

では、機能単位の設定によって評価結果が変わる。
耐久性を考慮した機能単位を設定することが必要となる。

5.比較の条件

素材間比較を行う場合は、

  • 同じ機能
  • 同じ使用期間
  • 同じ評価範囲

をそろえる必要がある。
これらが統一されていなければ、数値の比較は科学的に適切とはいえない。

 

LCAは、評価範囲・配分方法・機能単位を明示した上で環境影響を整理する方法である。
環境数値を理解するには、まずその前提条件を明示することが必要である。