日本の皮革技術を支えて70年NPO法人日本皮革技術協会監修
Leather Knowledge Project

処理経路比較

革としての利用・レンダリング・廃棄の比較

皮は発生後、必ず何らかの処理経路へ移行する。
環境評価は、「利用するか否か」というのではなく、複数の処理経路間の比較問題である。

主要経路は以下の四類型に整理できる。

  1. 革として材料化
  2. ゼラチン抽出
  3. レンダリングによる油脂・タンパク質回収
  4. 焼却・埋立処分

1.材料保持(革化)

なめし工程を経て、コラーゲン三次元ネットワークを安定化し、構造材料として長期保持する経路である。

特徴:

  • 分子間架橋導入による構造固定
  • 生分解抑制
  • 数年〜数十年の使用期間

炭素は材料中に一定期間保持される。
ただし、最終的には廃棄段階が存在するため、評価は使用期間と廃棄シナリオを含めて行う必要がある。

2.ゼラチン・コラーゲン抽出

一部の原皮や床皮は、直接ゼラチン・コラーゲン製造工程へ供給される。

この経路では、

  • 酸処理またはアルカリ処理による前処理
  • 加熱抽出
  • ろ過・濃縮・乾燥

を経て、コラーゲン由来タンパク質を可溶化・分離する。

ゼラチン抽出は、

  • 架橋を導入するのではなく
  • コラーゲン三重らせんを部分的に解離・加水分解し
  • 可溶化タンパク質へ転換する操作

である。

生成物は、

  • 食品用途(ゼリー、菓子)
  • 医薬用途
  • 工業用途

に利用される。

この経路では炭素は長期固定されず、比較的短いライフサイクルを持つ。
しかし副産物を高付加価値タンパク質へ転換する経路である。

評価においては、

  • 抽出工程のエネルギー投入
  • 副産物残渣の処理
  • 製品寿命

を含める必要がある。

3.レンダリング(油脂・タンパク質分離)

レンダリングは動物副産物を加熱・乾燥処理し、

  • 脂肪分(tallow等)
  • タンパク質分(meat and bone meal等)

へ分離する工程である。

エネルギー投入を伴うが、飼料・燃料・工業用途原料として再利用される。
この経路は、油脂およびタンパク質を回収する工程である。

評価は、

  • 投入熱量
  • 回収エネルギー
  • 代替効果(substitution credit)

を考慮する必要がある。

4.焼却・埋立

活用・資源化が行われない場合、焼却または埋立が選択される。
焼却では即時酸化によりCO₂が排出される。高含水有機物の場合、補助燃料が必要となる場合もある。
埋立では、分解過程でメタンが発生する可能性がある。処理施設の構造により回収効率は異なる。
この経路では材料保持も高付加価値回収も行われない。

処理経路比較の視点

革・ゼラチン・レンダリングは、いずれも副産物を「廃棄以外の経路」に導く方法である。

比較すべき指標は:

  • CO₂換算排出量(kg CO₂eq)
  • 投入エネルギー(MJ)
  • 炭素保持期間
  • 代替効果
  • 副生成物の利用率

である。

重要なのは、「革利用か否か」ではなく、複数経路の中で、各処理構造の排出・保持期間・代替効果を比較する問題である。

日本では、動物副産物を大量に処理可能な施設は限定的であり、処理能力には物理的制約が存在する。
したがって、処理構造全体を視野に入れた評価が必要である。

これら複数の処理経路を定量的に比較するための手法が、ライフサイクルアセスメント(LCA)である。
次節では、その方法論を整理する。